BCPに記載されないことがある重要事項があるのをご存じですか?:非常時のメンタルヘルス

この記事を書いている8月中旬は、学校が夏休み中です
宿題もせず、遊んでばかりのお子さんに手を焼いているご家庭が多いことでしょう

異常気象とも言える酷暑で、なんだかやる気が出ないという事業主さんもおられることでしょう
やる気がないと、物事がなかなか先に進みませんよね

人は感情の生き物と言います
そして、他者からは容易に理解しづらいものです

なぜ、こんなお話をするかというと
人の心・感情と身体の状態は、事業に大きく影響を及ぼすものなのですが
忘れられがちになるからです

今回は、事業における人の心身の重要性とBCPへの反映をテーマにお話しします

■ 無視できない重要事項

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書籍やネット上に多くの防災関連計画やBCPの ”ひな形” や ”サンプル” が出ています
それらの多くには、記載・例示されていない事項があります

惨事ストレス

日ごろの業務において、トラウマとなるような出来事(惨事)に遭遇したり
その出来事で被害を受けた人と接することで生じるストレスのことを言います

自然災害や大事故、テロなどに遭遇し、その後、トラウマに苦しんでいる方が多くおられます
また、被災者等を治療・支援する側の方が被災者等に感情移入するなどで、強いストレスを感じるようになります

BCPは、非常事態下での事業継続計画ですので、どうしても業務・事業を中心に物事が考えられています
しかし、事業には ”人” という資産が絶対に必要であり、継続させるのも ”人の力” があってこそです

思い浮かべてください・・・
職場で地震災害に遭遇した職員は、何事もなく平然と仕事を続けられるでしょうか
家庭や家族のことが心配・気になって仕方がないことでしょう

でも、目の前にいるお客さんや同僚を保護し、被害を受けた業務の再開に向けた活動もしなくてはなりません
あるいは、しばらくは家に帰れない、家族と連絡ができないという状態になるかもしれません

人は、注意が散漫になるとミスを犯す確率がアップします
人は、感情がそちらに向かないと、他者のことは無関心になります
人は、ストレスを受け続けると、心身に障害を来すようになります

参事ストレスをどのようにコントロールするのか
従業員、その家族のケアをどうするのか
お客さんや取引先、ビジネスパートナーの人たちもどうするのか

これらは、事業・重要業務を継続させる戦略、BCPに反映させるべき重要事項なのです

■ 知ることができる仕組み

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ネット上などには ”惨事ストレス” や ”メンタルヘルス” といった言葉が多く出ています
また、ストレス・コントロールやメンタルヘルス・ケアといった言葉もご存じかもしれません

でも、BCPとの関係性がイメージできているでしょうか
被災とか、事故被害といった言葉のイメージがあっても、BCPとの間はどうでしょう

イメージできないのは、両者の関係性を知らされていない・知ることができないことにあります
つまり、ネット上などでBCPと人のストレスを関係づけている記述が少ないからです

ストレス・コントロールやメンタルヘルス・ケアという活動自体も、これと全く同じです

事業にかかわる事業主・経営陣は、従業員の心身の状態を知っておかなければなりません
心身に障害が出てからでは、本人・ご家族にとっての痛手となります

事業の資産は ”人・モノ・お金・情報” と言われます
その中でも ”人” は ”戦力” であり、最も養成・補充・回復が困難な資産です

事業に必要な戦力を維持・管理しておくことは、事業主・経営陣の役目です
また、人の命と生活を守ることも事業主・経営陣の責務です

そのためには、事業主・経営陣が従業員を把握して管理する仕組みが必要です
また、事業主や経営陣、従業員らも自らの心身の状態を知っておかねばなりません

■ 人を知ることができる仕組み

ここにストレス・コントロールやメンタルヘルス・ケアといった観点での仕組みを紹介します

  • 人を知る機会を作る
    ミーティングや作戦会議を毎日行うことで、情報共有と相互理解を促します
  • 話せる・聴ける機会を作る
    個人相談や個別面談を定期的に行うことで、話す側と聴く側両者の ”気づき” を促します
  • 自分を知る手段を作る
    半ば定期的に行うことで、自分自身に対する気づきと関心を促します
    ・メンタルヘルス・チェックの実施
    ・血圧計や顔カガミの設置

これらの仕組みの目的は、”自発的に気が付くこと” にあります

お客さんや従業員などの状態や顔色は、見たり・聞いたりすることで分かりますが
でも、自分自身のことには無頓着となりがちです

特に、災害等の非常時にあっては、自分自身の顔色なんか気にしている暇がないことでしょう
また、忙しく活動している人らの身の上を、事業主が知る機会を失っていることも考えられます

この仕組みは、BCPだけでなく、日ごろの業務・事業にも必要なことです
従業員のことを知り、従業員同士が知り合っていることは職場の雰囲気、働く環境づくりにも大きく貢献します

参考:メンタルヘルス・チェック

ネット上には、災害で被災した方のメンタルヘルス・ケアに関する資料・情報があります
また、被災者支援を行う方のためのアドバイスなども記載されていますので、BCP発動時の各現場で活用できます
以下は、三重県が公開しているパンフレットです

参考資料:三重県HPより

このパンフレットの中にチェックリストがあります

  • スクリーニング質問票(SQD)
  • PTSDチェックリスト(IES-R)
  • こころの健康チェック(K6)
  • 支援者のメンタルヘルスチェック

これらのチェックで簡易的に心身の状況を確認することができます
なお、チェックの結果を見た本人が、さらにショックをうけることが考えられます
また、個人に関わるセンシティブな情報ですので、結果の活用と保管には十分気を付ける必要があります

■ まとめ

災害などの非常事態の発生直後は、緊急性のある活動・行動が主体となります
しかし、日数の経過とともに、できる限り元の生活に戻そうとする活動・行動になります

事業についても、継続できる業務・事業を運営しつつ、被害復旧と通常業務へと移行することになります
そのような流れに従業員の身の上、心と体がついて行けなくなることが大いに考えられます

一般的なBCPのひな形には、人の心と身体のケアに関する処置・指示事項は明示されていません
たとえ施設や設備が強化され、物資の備蓄があっても、人がいなければ何にもなりません
さらに、お客さんや取引先などの人たちのことも忘れてはなりません

そのことを考えた上で、防災関連計画やBCPには、メンタルヘルス・ケアに関する事項も加えてください
そして、そのような活動も必要である旨を皆で共有するようにしてください